今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記
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渡った橋を壊し、戻る気も示さない
紹介の礼が信頼を決める
名古屋の勤務先で営業アシスタントをしている私は、取引先から「誰かいい会社知らない?」と頼まれることがよくある。
その日も、知り合いの会社の営業を紹介することになり、日程調整から打ち合わせの段取りまで私が引き受けた。
打ち合わせは和やかに終わり、双方から「助かりました」「ありがとうございました」と感謝の言葉をもらった──のだが、そこから一切の報告がない。
「この前の件、どうなりました?」と聞くと、相手は気まずそうに目をそらした。
「・・まだ連絡してなくて。」
胸の奥がズシンと重くなった。
こちらは業務を調整し、時間も経費もかけて“橋”をかけたのに、渡ったまま戻る気配すらない。
夜、父にこの話をすると、静かに一言。
「紹介ってのは橋渡しや。橋を渡ったなら、“渡れました”って知らせるのが礼儀や。
それをせんと、橋を壊したようなもんや。次に誰も渡らんようになるで。」
紹介とは、信用を預ける行為
紹介というのは、ただ人をつなぐことではない。
紹介者の「信用」を預ける行為だ。
だからこそ、紹介を受けた側には報告の責任がある。
たとえ結果がうまくいかなくてもいい。
「先日はありがとうございました。今回はご縁がありませんでした」と
一報を入れるだけで、信頼は守られる。
だが、何も言わない人は違う。
「忙しかった」「結果が出なかった」
・・言い訳はいくつもある。
れど、結局は利がなかったから放置したというだけ。
そんな人ほど、紹介を取引と勘違いしている。
「橋を壊す」行為とは
父は新聞をたたみながら言った。
「紹介ってのは橋渡しや。橋を渡ったなら、渡れましたって知らせるのが礼儀や。
それをせんと、橋を壊したようなもんや。
自分で壊した橋は、もう誰も渡らんようになるで。」
なるほど、と思った。
紹介者が怒っているのではない。
戻ってこない姿勢が、無言の「関係を切る」サインになっているのだ。
紹介された相手も、「あの人、筋通さない人だったね」と感じる。
つまり、紹介者の信用を壊すだけでなく、自分の評価まで壊している。
紹介の軌跡を残す、筋を通す
最近は口頭で紹介を済ませる人も多い。
だが、私は必ずメールやメモで橋の軌跡を残すようにしている。
「ご紹介者:○○様/日付/結果報告期限」
たったそれだけでも、紹介の重みを互いに認識できる。
さらに初回でこう伝える。
「結果の有無にかかわらず、一報だけお願いします」
それで礼がなければ、次の橋はかけない。
情で例外を作ると、信用がすり減っていくからだ。
「紹介は結果より筋」
紹介が成立するかどうかよりも、
紹介してくれた相手への礼があるかどうかで、信頼の質が決まる。
「結果が出んかった」よりも、「報告がなかった」ほうが印象は悪い。
だからこそ、報告のルールを最初から言語化して共有するのがいい。
「本日はお時間ありがとうございました/結果:〇×/次の一手:―」
この一報だけで、紹介者も気持ちよく次の橋をかけられる。
今回の気づき
紹介は『信用の橋』。
報告をしないのは、橋を壊して戻る気がないという意思表示。
紹介者は、筋を通せる人にしか次の縁を作らない。
結果よりも、一報という最小の誠意こそが、ご縁をつなぐ本当の礼儀。
この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。


