今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記
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約束を守る力
「できない」と言える誠実さが、人の信頼をつくる
週明けの朝、社内で小さなトラブルが起きた。
「先週までにお願いしていた資料、どうなってる?」
そう尋ねても、相手は何も言わない。数日後、ようやく返ってきた返事は一言。
「忙しくてできませんでした」
その無責任な言葉に、思わずため息が出た。
できないのは仕方ない。でも、なぜその時に言えなかったのだろう。
その夜、父に話すと、電話の向こうで静かに言った。
「そら、できんことをそのままにしとる人は、信用を削っとるんやで。」
「できない」を言わない人たち
「できません」と伝えるのは勇気がいる。
でも、黙って放置するほうが、よほど信頼を失う。
できない理由を言えばいいのに、何も言わない人ほど「自分を守る」ことを優先している気がする。
期日を守るより、自分の都合や利益を優先しているだけ。
それは徳のない行動であり、結果として自分の価値を下げてしまう。
約束とは、「相手の信頼を一時的に預かること」。
破るなら、せめてその信頼を返すための責任を見せるべきだと思う。
報連相は、人間の徳や
父は昔話を思い出すように語った。
「昔はな、遅れるときは必ず電話した。『まだできてへんけど、ここまではやっとる』ってな。
今の子は、黙っとくほうが波風立たんと思っとる。でも、それは逆や。
言わんで済む関係は、もう信頼が切れとる関係や。」
私はハッとした。
できないと伝えることは、相手に誠意を示す行為でもある。
報連相(ほうれんそう)は仕事のスキルではなく、人としての徳なのだ。
「整える」と「伝える」の間にある心
AIが整えてくれることは、たしかに助かる。
でも、生成された言葉をそのまま使うと、考えたようで考えていない状態になる。
便利さの裏で、配慮や気遣い──つまり心の部分が抜け落ちてしまう。
仕事の文章も、人とのやり取りも、結局は人の心が伝わってこそ意味がある。
もしその言葉に責任があるなら、相手の立場を思い、丁寧に伝えようとするはずだ。
それが人としての誠意であり、AIには代えられない部分だと思う。
「言い訳」より「現状共有」を
父の言葉を聞いてから、私は「報告のタイミング」を意識するようになった。
遅れそうなら早めに伝える。助けが必要なら、正直に相談する。
言い訳を並べるより、「今こうなっています」と共有することが、信頼を守る第一歩だと感じる。
誠実さは「成功」ではなく、「誠意ある対応」に宿る。
父の言葉を借りるなら──「報告せんで済む関係は、もう信頼が切れとる関係や。」
今回の気づき
できないことを放置するのは、信頼を削る行為だと思う。
人は誰しも、事情が重なれば期日に間に合わないこともある。
けれど、「遅れます」「助けてください」と一言伝えるだけで、受け手の印象はまるで違う。
その言葉には責任と誠実さが宿っているからだ。
期日を守るのは当然のこと。
ただ、本当に大切なのは相手を思って行動すること。
そうすれば、一報を入れるのは自然なことになる。
その小さな誠意こそが、人と人の信頼をつなぐ本当の力なのだ。
この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。


