今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記

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ご縁は1回きりでは育たない

名刺の枚数より、心の通う一枚を

実家のリビングのテーブルに、名刺が山のように積まれていた。
展示会を終えた週末、わたしはその束を前に、ため息をついていた。

「こんなに名刺交換したけど、どこまでフォローすればいいのかな・・」

父は新聞を読みながらぼそっと言った。
「そんなん、気が合う人だけでええんちゃうか?」

気が合う人・・その言葉に、わたしは少しひっかかった。
たった数分話しただけで、気が合うかどうかなんてわかるのだろうか。

名刺交換=ご縁の始まり

展示会では、1日で50枚以上の名刺を交換した。
でも、実際にメールを送って反応があるのはほんの数人。
SNSでつながったとしても、そこから何かが動くとは限らない。

名刺交換=ご縁の始まり
そう思っていたけど、
実際は「ただの接点」でしかないと気づいた。

名刺交換の瞬間よりも、その後のフォローアップのほうがずっと難しい。
展示会が終われば、相手も仕事に戻る。こちらも日常に戻る。
だからこそ、関係を続けようとする意志がなければ、ご縁はすぐに薄れていく。

人を良く見る必要性

「昔はな、仕事って人情やった。飲みに行ったり、顔見て話したり、そういう中で続いていったんや」

父の言葉には重みがある。
確かに、地域でのつながりが強かった時代は、それで十分だったのだろう。
「気が合う人とは、自然と長く続いた」
それは父の生き方そのものだった。

けれど今は、顔を合わせるよりも先にメールやSNSでやり取りをする時代。
気が合うかどうかより、誠実かどうかが先に問われる。

「ご縁を大事にするって、相手の時間を大事にすることでもあると思う」
そう言うと、父は静かにうなずいた。
「たしかに、最近は顔もよう見えん時代や。せやから、余計に信用できる人かよう見なあかんな」

想いの言語化ができてますか?

フォローアップの目的は、営業でも売り込みでもない。
出会った相手を見極め、信頼を積み重ねること。

相性の合わない相手に無理して近づく必要もない。
でも、せっかくの出会いを名刺の山で終わらせるのはもったいない。

たった一通のメールでもいい。
たった一言の「お会いできてうれしかったです」でもいい。
その小さな行動が、次のご縁をつなぐきっかけになる。

父は新聞をたたみながら言った。
「結局のところ、続けようと思える相手が本当のご縁なんやろな」

わたしはうなずいた。
ご縁とは、偶然の出会いを続けようとする“意志”のある関係。
名刺をもらうことではなく、関心を持ち続けることがご縁を育てる。

展示会での出会いも、仕事でのつながりも、
一度きりで終わるなら点のまま。
でも、心を込めてつなげば線になる。

そしてそれが、いつしか円(縁)になるのだと思う。

今回の気づき

名刺交換は「接点」、ご縁は「関係」。
出会いをご縁に変えるのは、時間をかけて関心を持ち続けること。
信頼は、言葉と行動を重ねて育つ。

この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。

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