今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記

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理念の記念日なんてあるんか?

土曜日、経理作業で実家に戻ったときのこと。
お茶を飲みながらふと私が切り出した。

「そういえば、知り合いの会社では『理念記念日』っていうのをやってるんだって。9月30日に毎年、社員で集まって理念を振り返るらしいよ」

すると父・可藁津今茂(68歳)は、少し驚いた顔をして笑った。

「理念の記念日? なんやそれ。理念なんて、わざわざ記念日にせんでも心に持っとけばええんちゃうんか」

父は理念を紙に書いたことはないけれど、自分の信念には自信を持っている。
「ええもんをちゃんと作って、ええ形で届ける」
それが父の口癖だ。

ただ、私は思った。
理念があるからこそ記念日のような形にすると、社員みんなで同じ方向を向けるんじゃないかと。

「お父さん、自分が心に持ってるだけじゃ伝わらないこともあるよ。形にしたら、社員にとっても思い出す日になるんじゃない?

そう言うと父は少し黙り込み、うーんと考えた。
そして、ぼそりとつぶやいた。

「たしかに、節目があると立ち止まって考えられるなあ」

理念記念日という日があれば、自然と立ち止まって考えられる

私は、父のその言葉に少し驚いた。
いつも「理念なんて言葉遊びや」と笑い飛ばしていた父が、意外と受け止めてくれたからだ。

実際、会社の毎日は忙しい。
納期に追われ、顧客対応に追われ、社員の相談に追われ・・
理念を振り返る余裕なんて、そうそうない。

でも理念記念日という日があれば、自然と立ち止まって考えられる。
休みの日に家族や社員と過ごしながら、「うちの会社はなぜ存在するのか」を語る。
それは、会社にとっての心の休息日にもなる気がした。

理念は、ただ心にあるだけでは届かない。

父は理念を言葉にするのが得意じゃない。
けれど、その背中から学んできたことはたくさんある。
だからこそ、娘としては思う。

理念は、ただ心にあるだけでは届かない。
形にして、節目を設けて、共有していくことで初めて「会社全体の力」になる。

今回の気づき

理念は持つだけではなく、立ち止まって思い出す機会をつくることで力を発揮する。
記念日という形は、そのきっかけのひとつになりうる。

この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。

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