今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記

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仕事より大事なものを見落としていませんか?

月に1〜2回の経理作業で実家に帰る私。
いつものように帳簿を整理していると、父・可藁津今茂(68歳)が片手に白いギプスをはめて居間に現れた。

「ちょっと階段で足踏み外してしもうてな。骨は折れてへんけど、手首が腫れてしもうて・・ギプスや」

軽く言う父に私は驚いた。
「え、ちゃんと大丈夫なの?無理してない?」

普段なら多少の怪我くらい仕事には支障ないと突っぱねる父。
でもこのときは少し肩を落としながら、苦笑いでこう言った。

「いやぁ、年やなぁ。前やったら次の日には普通に使えとったけど、もう無理はきかん」

その姿に、私は胸の奥がきゅっとした。

ギプスをした父は、ペンを持つのも不便そうで、いつもならサッと書き込む伝票もゆっくり。
「片手が動かんだけで、こんなに仕事がやりにくいとはな・・」とつぶやいていた。

私は横で帳簿をつけながら、正直心配になった。
父にとって仕事は生活のすべてであり、人生の中心。
でも、その体が動かなくなればどうなるのか。

「お父さん、無理してまで会社のことやらなくてもいいんじゃない?」
そう言うと、父は少し黙って、目線を落とした。

「わしな、これまで仕事第一でやってきた。休むなんて考えたことなかった。でも今回の件で思ったわ。体あっての仕事や。ほんま、家族に心配かけてまで無理するもんちゃうな」

父がそんなふうに言うのを初めて聞いた。
強くて頑固で、仕事を休むことなど絶対にしなかった父。
その父が、「無理せん方がええ」とつぶやいたのだ。

怪我をしてわかること

怪我をして初めて、父自身も周りに支えられていることに気づいたらしい。
社員が「社長、今日は休んでください」と声をかけてくれたこと、母が家で細かいことを手伝ってくれること。
不自由になったからこそ、見えた優しさがある。

「人間、一人で立っとるように思うても、実際は支えられて立っとるんやな」
父の言葉を聞きながら、私も同じことを考えた。

私自身、名古屋での仕事や生活に追われる中で、健康のことを二の次にしてしまうことがある。
でも今回の父の姿を見て、仕事より大事なものがあると痛感した。
健康、家族、そして周囲とのつながり。

後継者にとっても同じことが言えるのではないだろうか。
目の前の業務や売上に必死で、自分の体や心を犠牲にしてしまう。
でも、倒れてしまったら元も子もない。

父のように、「無理がきかない」と認めることは弱さじゃない。
むしろ、それはこれからの時代を生きるための強さなのかもしれない。

お盆休みが終わって、仕事モードに切り替わる今。
少し不便を抱えた父の姿を見て、私は自分に問いかける。

「私は、健康を一番大事にできているだろうか?」

経営者でも後継者でも、まず自分の体を守ること。
それが結果的に、会社も家族も守ることにつながる。

今回の気づき

健康は仕事の土台。無理をやめて支え合うことこそ、未来をつくる力になる。

この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。

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