今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記
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『読んでないけど、まあええか』は通じない
母が体調を崩してからというもの、私は月に一、二度、実家に戻るようになった。
名古屋での本業の合間を縫って、経理や書類の整理を手伝っている。
そんなある日、父が所属している経営者団体の書類を、応接テーブルの上で見かけた。
「それ、次の勉強会の案内や。参加する人には事前資料も送ってあるんやけどな、毎回『読んでない』言う人がおるんや」
と、父が少し苦笑しながら言った。
「えっ、読んでないって・・何のための事前配布なん?」
「ほんまやで。しかもな、『聞いてない』とか『そんな話やった?』って言うんや。いやいや、それ、資料にちゃんと書いてあるし、期日も書いてある」
父は、あきれながらもどこか悲しそうだった。
「結局な、読んでへん人ほど後で文句言うんや。段取りが違うとか、話が違うとか」
自分が『客』の立場になると急に横柄になる
たしかに、それは仕事でもよく見る光景だ。
「相手が顧客や取引先ならきっちり対応するのに、自分が『客』の立場になると急に横柄になる人、いるよね」
私がそう言うと、父は「おるおる」と笑いながらも、真顔に戻った。
「けどな、勉強会なんて、利害も発注もないやろ。そういう場での姿勢が、人として出るんやと思うわ。
『仕事じゃないから適当でええやろ』って態度は、巡り巡って信頼を失うもんやで」
姿勢の違いが、行動の差になる
それを聞いて私は思った。
きちんとした人って、資料を読み込んでるだけじゃなくて、ちゃんと保管もしてる。
だから言った言わないで揉めることも少ないし、話の飲み込み方が違う。
姿勢の違いが、行動の差になるんだと思う。
そして何より、父は自分が主催側の立場でも「読むのが前提」と信じて疑っていない。
それはある意味で『アナログだけど筋の通った人間関係』を大事にしてる証拠だと感じた。
「お父さんさ、あんまり細かいルールとかは言わないのに、『一言くらい言うべき』とか『読むべきや』ってところは、すごく気にするよね」
そう言うと、父はちょっと照れたように笑って、
「そらそうや。読んでへんで文句言われたら、こっちがしんどいやん」
とだけ言って、また書類に目を戻した。
今回の気づき
普段の仕事では「資料を読む」「事前に目を通す」ことが当然でも、
関係性がフラットな場や、自分が『お客さん』になる場面では、その意識がゆるみがちになる。
でも、「読まない」「約束を守らない」という行動は、
相手の手間や信頼を損なうことにつながる。
形式ばったことより、まずは『読む姿勢』や『伝える姿勢』が、長い関係を築くうえでは何より大切なのだと思った。
この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。