今、変わるべきでしょ!可藁津今茂の経営日記
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AIに頼りすぎていませんか?
言葉を生み出す力が人を成長させる
名古屋の自宅で、提案書の仕上げをしていたある夜。
私はAIツールを使って原稿を整えていた。
「これ、AIに書かせたら、すぐにできちゃうんだよ」
電話越しに父へそう話すと、少し間を置いて、ぼそりと返ってきた。
「便利やけど、頭が鈍るんちゃうか?」
思わず笑ってしまった。
けれど、その一言が、どこか胸に引っかかっていた。
AIは便利だけど
AIで文章を作ると、たしかに早い。
きれいにまとまり、誤字もなく、言い回しも整っている。
だけど、そこに『自分の考え』がどれだけ残っているのか、
ふと不安になることがある。
昔はメール一本を書くにも、言葉を選び、言い回しを考え、何度も消しては書き直した。
「この言葉だときついかな」「伝わるかな」
そんな時間が、今思えば『思考する時間』だった。
AIに頼るようになってから、その過程が一気に省かれてしまった。
そして、考えることを奪われているような感覚があった。
想いのこもった言葉の大切さ
その話を、週末に実家へ帰ったときに父にした。
「AIが便利すぎて、考える前に答えが出ちゃう。
これって、人間にとって良いことなのかな?」
父は新聞をたたみながら、ゆっくりと口を開いた。
「ワシらの時代はな、口のきき方ひとつで取引が決まったんや。
ええ言葉を出せるやつは、信用を取れる。
けどな、どれだけうまい言葉でも、心がこもっとらんかったら通じへん。」
私はその言葉にハッとした。
AIが出すのは正しい言葉かもしれない。
でも、想いのこもった言葉は生み出せない。
便利さの裏にある失われるもの
父は続けた。
「たとえば、謝るとき。
申し訳ありませんって言葉だけなら誰でも出せる。
けど、どこで何を間違えたかを自分の言葉で言えるやつは、信頼される。
言葉には心の重みがいるんや。」
AIが整えてくれる文章は、美しいけれど、どこか軽い。
人が書く文章には、迷い、悩み、決意がにじむ。
その重みがあるからこそ、相手の心に届く。
便利さの裏には、失われつつある「考える時間」と「感じる余白」があるのだと思った。
人を動かすのは人の言葉
AIを使うこと自体が悪いわけではない。
むしろ、使いこなす力はこれからの時代に必要だ。
でも、頼りすぎると、自分の思考が空洞化していく。
自分で考え、自分の言葉で伝えること。
それはAIがどれだけ進化しても、決して代わりにはできない人間の力だ。
言葉を生み出す力は、考える力であり、生きる力。
AI時代だからこそ、言語化力を磨くことは「人間としての訓練」になる。
父の言葉が頭に残る。
「結局、人の心を動かすんは、機械やない。人の言葉や。」
私はうなずきながら、AIに任せきりにしていた原稿をもう一度見直した。
自分の言葉で書き直してみると、少しぎこちなくても、不思議と温かい文章になっていた。
今回の気づき
便利さは思考を奪う。
言葉を生み出す力こそ、人の知恵と誠意の証。
AIが整える時代だからこそ、考えて言葉にする努力が、人を育て、関係を深める。
この物語はフィクションですが、実際の経営現場でよくある話をもとにしています。


